〈前編〉北京の蟻と鼠は大成を夢見る


同期日で取材した北京在住の写真家、任航(レンハン)は短文投稿サイト「微博」(ウェイボ)経由でモデルを集めた

「ある調査によると、蟻族は中国全土におよそ100万人、北京に10万人はいると言われています。全国の大都市には必ずいると言っていいでしょう。北京、上海、広州、重慶、西安……。こうした大都市は、その他の地域と比べて魅力的に映ります。例えば若者にとって、北京は希望を意味します。小さな頃から受けてきた教育のなかで、強く印象づけられているのです。北京は大都市で、チャンスに溢れていると。だから実際にどんなところか分からなくても、憧れを抱いてやってくる。北京がどんな街であるかを理解しているかどうかに拘わらず、北京に着さえすれば、生活や将来はより良いものになると信じているのです」

「蟻族の心情は混沌としています。自分がなにをすべきか分からない。これはつまり、キャリアプランの欠如という問題なのです。私の弟の話をしましょう。彼は三流大学の専科生でした。こうしたキャリアの人が北京で職を探す場合、成功のチャンスはとても少ない。でも彼が、蟻族のような情況に陥ることはありませんでした。それは2人でとことん話し合ったからです」

「大学時代の弟は、バンドのリードボーカルやバスケに夢中でした。それから色々なアルバイトを経験していました。ケンタッキー、マクドナルド、パソコン販売、アパレル店員……。彼が北京にやってきた当初は、事務員かパソコン関係の仕事をしたいと言っていたのですが、それまでに携わってきた仕事や彼の性格を振り返ると、そういった仕事は合わないんじゃないかと思いました。そこで私は彼に、営業の仕事が向いているよとアドバイスしたのです。彼は最初こそ信じられないような表情をしていました。そんな経験はまるでないのに、それで大丈夫なのか?と。しかし或る共同購入(ある商品の購入希望者を募り、希望者数が規定数に達すると商品販売が実現するサービス。フラッシュマーケティングも呼ばれる)のウェブサイトの営業員となった彼は、たった1年で給料が5倍になり、マネージャーに昇進したのです」

「弟がそれだけ加速的に昇格できたのにはワケがあります。或る日、知り合いと食事に行った時、弟だけが車の後ろで、会話に参加もせず黙っていました。私はその時、機嫌が悪いのかと思っていたのですが、後日自宅で、彼が書いたノートを見つけたのです。そこにはびっしりとレストランの店名が刻まれていました。そのいくつかは線で消されていたり、チェックがついていました。気になった私は、それがなんなのかを訊いてみると、弟はこう返事したのです。食事に行った日、どの店が繁盛しているかを観察していたと。そして各店舗に連絡をとり、営業しに行ったのだと。そう、彼はあらゆる時間を仕事に費やしていたのです」

「彼が得た結果は、相対的に見ても大きなものでした。それは3つあります。一つ目に、彼は自分の得意かつ好きな仕事の方向性を見出せたこと。二つ目に、仕事に熱心に打ち込んだこと。そして三つ目に、共同購入はこの数年、中国で飛躍的な成長を遂げた業種であること。この3つが合わさることで、私の弟は加速度的に貧困から抜け出すことができたのです」