大橋 仁、人類の明るい繁栄のため全財産をはたいて酒池肉林を撮り収める。


そうやって始まっていった。漠然と考えてたところから松尾さんまで辿りつくのに、1年くらい。そこから人集め、場所探しでまた1年。場所に関しては、松尾さんが「日活なら貸してくれるんじゃない? 昔ロマンポルノやってたし」的な発想で当たってみたら、見事にOKが出てさ。俯瞰で撮ってるシーンとかあるんだけど、それは映画の特殊機材も連れてきて撮ったのよ。20メートルくらいのクレーン。

——それもう、映画製作の規模ですって。

結果的には、そういう規模になっちゃったよね。浜で走ってるヤツとかは、軽トラックを改造して、荷台から撮ってる。走ってる方は全速力だからさ。さすがに後ろ走りじゃ撮れない。砂浜だしさ。だから、かなり綿密にロケハンと打ち合わせを繰り返して進めていったんだよ。

——そういう意味じゃ、大橋さんって、写真は生に向かってるけど、自分自身の生活は死に向かってたんですね。

そういった意味ではもう、全勢力をかけるくらいね。死ぬほど生を見たいってことじゃない? 死んでもいいから見るっていう。でもそこで死んじゃったら終わりだけど、生き残れば、激烈に生きたってことになるからね。まあそれは死んでもそうなのか(笑)。

だけど最近思うのは、肉体でブツかっていくっていう身体的なハードさをみんな忘れちゃってるんじゃないかってこと。わざと避けてるっていうか。でもアタマだけで考えるようになっていくと、それこそ命や思考能力、人間関係。ありとあらゆるものがどんどん弱まっていく。人類の衰退に繋がるよね。もう人類は滅亡のほうに相当傾いているからさ。そんな今こそ肉体的になっていく必要があるし、ハードなコミュニケーションを持つべきだと思うよ。

——写真家で言うと、海外じゃコンセプト重視ですね。

どうやら人類は自分たちのことを知的だと思い始めてるらしい。バカなのに。サルのくせに。チンポが立ってガマンできなくなっちゃうくせに!

理論物理学者の(スティーヴン・ウィリアム・)ホーキング博士が科学雑誌で言ってたけどさ。記者会見で「地球以外に知的生命体はいるのか?」っていう質問に対して、「えっ? 地球にすらいないと思いますけど」って返してて。その一言に尽きるよ。人間なんて、しょせんは猿なんだから。インテリぶったりアートぶったりしてもダメでしょ! もうホントにヤバイよね。

——ハハハ。

もう1人、画家のフランシス・ベーコン。あの人の40年間くらいのインタビューをまとめた本があって。それが好きでさ。何回も読んでるんだけど、彼は17歳のときに衝撃的なことに出くわしたと。それはなにかって、道ばたにイヌのクソが落ちてたんだね。それがパッと目に入って思ったのが、〝これが人生なんだ〟と! そのときの衝撃を原点にして、私は絵を描いていると! その感覚には、ものすごい正しさを感じた。しかも17才で、人生の姿を直感したと。偉い人がいたもんだよ。

人生を心底テキトーな夢や幻想で膨れ上がらせようと世の中は必死だけど、そんなのは人々にとって毒でしかなくて。見て見ぬフリじゃなく、自分たちの正しい姿や状態を正面から見ることだよ。そうしない限り、意外と終わりは早いんじゃないかな。根も葉もないところでお祭り騒ぎしてもダメだよね。土台がどっしりしっかりしてないと、そりゃあ、いいお○こもできませんぞって話でね。なんて、思う。ハハハハハハハ!

写真集『そこにすわろうとおもう』より