大橋 仁、人類の明るい繁栄のため全財産をはたいて酒池肉林を撮り収める。


Interview and text by Tomo Kosuga

5b0e0190a8ec6dc605e1decb459cf9a2『凄絶ナリ』——。アラーキーこと、荒木経惟にそう言わしめた写真がある。赤く染まった写真は、一見では繊細で落ち着き払った雰囲気だが、よく見るとそれがシーツに染み渡った鮮血だと分かる。しかも異常な量の、人間の、血。それは、大橋仁の義父による自殺の光景だった。

第1発見者となった大橋、このとき19歳。救急車を呼ぶと同時に「目のまえ」の光景にカメラを向けた。その後、幸運にも一命をとりとめた義父の「つづき」を、大橋は追い続ける。カメラひとつで。この生死のジェットコースターをまとめたのが、大橋の処女作『目のまえのつづき』(青幻舎 刊)だ。

〝生きること、死ぬこと〟をきれいごとで描くことなく、裸一貫、カメラひとつでぶつかった。ページをめくれば、様々な感情に揺れうごく魂の咆哮が聞こえてくる。

そして次作『いま』(青幻舎 刊)が刊行されたのは、処女作から6年後のこと。10人の妊婦からオギャーと赤ん坊が飛び出すまでの1年8ヵ月と、幼稚園児たちの姿を写すことで〝いのち〟をシンプルに描いた。

『いま』の表紙を飾った1枚の鮮やかなブルーが、処女作『目のまえのつづき』の燃えたぎるレッドと対称的であることが象徴するように、この2冊は表裏一体の関係にある。しかし、一般的に直視しがたい、なんともダイレクトというか、いわゆるナマナマしい着眼点は変わらない。とくに出産シーンなんて、血みどろの赤ん坊がニュルルルッ!と出てくるところを一切の迷いなく(のように見える)、赤の他人の大橋が写真行為目的で撮ってるんだから、もうなにがなんだかワケが分からない。

それからさらに7年が経ったいま、満を持して大橋が新作『そこにすわろうとおもう』を赤々舎から発表。上記2冊でも十分すぎるほどハードコアな人だと思っていたのに、ここにきてその限界値を自らブチ破るような、トンでもない3冊目を誕生させた。柔かなタイトルとは裏腹に〝ああ、ハードコアってこういう意味だったっけ〟と唸らされるような激写、激写、激写。実に400ページ。A3サイズ。23,000円。どれをとっても、センセーショナル。

その全貌は、ぜひ本を手にとって確認もらいたいが、しいて言うなら、ニッポンとポルノを掛け合わせてできたエロザムライの股に生えた男性器型のサムライソード300本に、同じく300匹ものニワトリが無理強いされながら、甲高い鳴き声で「オーウ、ニッポルノー!」って奇声を発してる感じ。三国志の董卓もビックリの〝肉肉肉〟林ぶりである。トンネルを抜けるとそこは女性器が……いや、むしろトンネルが女性器だったのかも……。とにかく、この酒池肉林騒ぎのために大橋がバラまいた札束はというと、実に「ポルシェ」数台分。え、マジで?! そんなバブリーな響き、久しく聞いていなかった。

年の瀬も迫った12月末の凍えるような週末、彼のスタジオを訪問。生きること、現代アートへの怒り、解剖学、ご先祖様との意外な繋がり、そして新作のことなどなど、盛りだくさんの話を時間の許す限り、語り合ってきた1万字越えのロングインタビューをココに公開しよう……。